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2008.06.18

無名の父

Mumei

読んでなかった文庫の束がひょっと出てきたので、
たまたま手に取って読んだ。「無名」。

死にゆく父を描く、というと、俳句つながり?もあって、
小林恭二の「父」が頭をよぎったのだけれど、
あの「父」と比べると、読んでいる間じゅう、
何だかなあ、という強烈な違和感につきまとわれた。

“可能性の集合体こそ自分だと思ってたに違い ない、
それゆえに父は敗北する運命にあった”という、
小林の結論には、腑に落ちるものがある。
観察者と被観察者のねじくれた関係も、
個人的には、だろうけど、父と息子らしいと思うし。

「無名」は、なんつーかなー、
“いい子ちゃん”なんだよなー、始めからしまいまで。
清澄な筆致ねー。“父の死”ってそんなキレイゴトなのか?
でも、ファンの心はくすぐるんだろうな。
潔さ、とか、清々しさ、とかの印象で。

奇しくも家族の中における沢木耕太郎の位置も、
浮き彫りになっていたのだけれど、
よくできたお姉ちゃん2人の末っ子ねえ…
なるほど、それであの文体なんだな。
そっちの方がよっぽどリアリティがあった。

最近見る映画評論などは悪くないと思ってたのだけれど、
ある種の冷たさが求められるこういう題材は、
ハッキリ不向き。
分不相応って感じだ。
個人的には、「父」の方がまだ読みでがあると思う。
というか、「無名」は何にも胸に来るものがない。
息子じゃない人間が書いたのならまた別だとは思うけど。

それでも、彼は“守られる”んだよな。
彼を愛する人たちに間違いなく。
そして、いつまでも“無垢”のままでいられる。
まあ「深夜特急」と、たとえば「夜の果ての旅」は。
どこまで行っても交差するところはないんだけどさ。
あーうらやまし。俺だって、
そういう恵まれた人生の方が良かったよそりゃ。笑。
てゆうか、何で俺は恵まれた人の本なんて読んでんだ?
苦笑。

いい大人が“無垢”もない、だろうよ、って、
声もあるだろうよ。、
でも好かれる、守られるって力だね。
力への意志。あまりに真っ直ぐすぎて眩しいぐらい。
コンプレックスの薄い北野武かも。
言語矛盾してるけど。

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